自分の存在の基盤が崩壊するような危機的状況の只中で
あなたは神の助けを見出すことができると聖書は約束しています。
信仰の確信を歌った詩編46編を学びながら
詩人の神への信仰に触れてみたいと思います。
助ける者の発見
46:2 神はわたしたちの避けどころ、わたしたちの砦。苦難のとき、必ずそこにいまして助けてくださる。
46:3 わたしたちは決して恐れない。地が姿を変え、山々が揺らいで海の中に移るとも
46:4 海の水が騒ぎ、沸き返り、その高ぶるさまに山々が震えるとも。セラ
詩編46:2-4 新共同訳
この詩で言及されている苦難とはカオス、混沌です。
神が定められた創造の秩序の崩壊です。
移るはずのない山々が動揺して海の真ん中に飲み込まれていく。
海の水が騒ぎ、沸き返るさまは、悪の力が高ぶり、既存の秩序を崩壊させるさまを描写します。
突然の事故や病気、戦争、犯罪、社会的騒乱、失業などによって
自分の生活の基盤が根底から揺るがされ、破壊されてしまう。
そのような苦しみの只中でも、「あなたは神の助けを発見することができる」と聖書は語っています。
「苦難のとき、必ずそこにいまして助けてくださる」という文は直訳すると「苦難の時に、力強く発見される助け」となります。
「必ず」と訳された語מְאֹד(メオド)の基本的意味は「力」であり、「猛烈に、力強く、迅速に、大いに、完全に、非常に」などの意味があります。
この語は、神の迅速で、力強く、完全な救済のわざを表現しています。
あなたの生活を破壊しようとする力が激しく襲いかかればかかるほど
この神の救済の力はさらに大きく、猛烈に、力強くあなたの人生に見いだされることになります。
あなたは神の救助の働きを見出すことができます。
あなたは助ける者と出会い、その圧倒的な力を体験することができるのです。
あなたが死に直面して、その存在が根底から崩壊させられる時
あなたは神のなかに大いなる助けを見出すことができるでしょう。
あなたは死と言う人生最大の苦しみを
神への信仰により、喜びと平安をもって乗り越えていくことができるのです。
神の川
46:5 大河とその流れは、神の都に喜びを与える。いと高き神のいます聖所に。
46:6 神はその中にいまし、都は揺らぐことがない。夜明けとともに、神は助けをお与えになる。
詩編46:5-6 新共同訳
大河と訳された語נָהָר(ナーハル)は「輝く、晴れやかになる」という意味もありますが、基本的には「川、一年中水が流れている川、大河」を意味します。
ここでは、神の臨在によってもたらされるいのちと喜びが川に例えられており
混沌をもたらす破壊的な水とコントラストになっています。
神のいます聖都、神殿のあるエルサレムは、ヒゼキヤ王がつくった地下水道によっていのちの水が供給されていました。
神は常にわれらと共におられ、内側から喜びと活力を与えて、しっかりと支えてくださっています。
「夜明けとともに、神は助けをお与えになる」という文において、詩人は出エジプトにおける神の救いのわざを思い起こしています。
夜明け前、紅海の海において、神は海の水を元に戻してエジプト帝国の軍隊を滅ぼされました。
神に避け所を見出し、その助けの御手に信頼する者に対する救済のみわざは
聖書が記録する歴史において繰り返されています。
エルサレムを包囲していた18万5千のアッシリア帝国の軍隊が一夜にして壊滅したという出来事を聖書は記録していますが
それを記念してこの詩がつくられたのかもしれません。
夜明け前、それは最も暗い時間帯です。
しかし、神の大いなる救済のわざが現わされるのにはふさわしい時なのでしょう。
放棄せよ
神の意志に沿わない策略、活動、たくらみを放棄せよと神は厳粛に語っておられます。
46:10 「やめよ。わたしこそ神であることを知れ。わたしは国々の間であがめられ、地の上であがめられる。」
詩編46:10 新改訳
「やめよ」と訳された語はרָפָה(ラーファー)の使役形であり、「やめる、捨てる、手放す、見放す、放っておく、手を引く」などの意味になります。
この語は、高ぶって神に逆らい、戦争などを起こす諸国に対して、その策略、計画を放棄するように迫っています。
また、直面する問題を自分の人間的知恵に頼って事態を打開しようとする人々に対して
人間的知恵や能力に頼った活動や計画などを放棄するように語っています。
それら神の意志に沿わない計画や活動は私たちに祝福や利益を与えるどころか、かえって損害やマイナスを与えてしまいます。
アッシリア帝国の援軍を要請したアハズ王の計画は一時的には成功したかに思えましたが
かえってアッシリア帝国の侵略を招く結果となってしまいました。
余計なことをするな!
でないと、わたしの示す事柄が後回しになり、おろそかになってしまうではないか。
余計な活動や計画を放棄せよ。
わたしの示す事柄に集中し、専念せよ。
目の前の問題に心奪われて動揺するのではなく
神の偉大さ、その栄光に目を向けて神をあがめましょう。
生活の基盤が根底から崩れ去るような喧噪の時であればあるほど
静まることが重要です。
自分に語りかける神の細き御声に耳を傾けていきましょう。
そうするならば、あなたはこの世界を創造された偉大なる神から
圧倒的な神の助けを見出し、体験することができるのです。